私は「食育」という言葉が普及する以前から、食の大切さを子ども達に伝える活動を地元栃木で行ってきました。そのきっかけは、
そんなことをじわじわと実感してきたからです。 少なくとも戦中戦後の食料難の時代と、現在の飽食の時代では全く状況は違っていますね。 生きていくために食べることに必死だった時代と、世界中のものが手に入り、個人の好みに合わせて色々選べる時代。 今、私たちは多くの中から食材を選び、食事をする状況を選択する自由を得ました。 少し前までは、その土地の気候風土を反映する郷土料理や伝統・風習・しきたりなどに見合った食習慣が受け継がれ、 それに倣って選ぶことができました。しかし核家族が増え、生活のペースがそれぞれバラバラになると、代々伝わる食習慣を自然に学び、身につけていくことが、難しくなってきたのではないでしょうか。
「食」をどんなふうに捉え、どのような食生活をしていけばよいか、そんなことを子ども達に積極的に教えていかなければならない時代になってきたのです。
味覚は9~10歳くらいまでに完成すると言われています。 それまでに、自然の中で育まれた本来の素材の味を経験させることがとても大切になります。 自然の中で育ったものにはいろんな風味が含まれ、実は甘味、塩辛さ、苦味、 酸味、旨味が交じり合った味なのです。活きた素材のふくよかな味わいが 子どもの味覚を含めた五感を育てるのです。
もし、この時期添加物の多い食品ばかり食べていると、その味に慣れ、その味が美味しいと感じ、 そのような味を求めつづけることになってしまうのです。 便利ですから気軽に利用してしまいますが、子どもにはできるだけ手作りの味を感じてもらいたいものです。 なぜなら、自然の恵みの美味しさを知り、本物の味を味わう喜びを感じてほしいのです。 私たち人間も自然のサイクルの中で生きていることを実感し、正しい食べ方を身に付け、 その土地の食文化を伝えていってほしいからです。
「子どもに料理を教える余裕が、なかなかないんです」 「結構そういう時間が無いんです」 という言葉をよく耳にします。 そんなお母さん、お父さん方のために、なにかお役に立ちたいと思います。 一緒に作って、一緒に食べる。そんな中で、子どもたちの好き嫌いが解消される場面を何度も見てきましたし、 もしかしたら、お子さんのいつもとは違った一面を発見することができるかも知れません。 料理教室が終わったら、もう一度ご家庭で料理してみてください。 そしてみんなで、その美味しさ、楽しさを何回も味わってください。